脳卒中患者の日常場面における生活活動は身体的および精神的機能障害,家族構造。物理的環境による影響を受けている。たとえば,歩行能力は脳卒中患者の日常生活活動を予測するのにもっとも重要な要因のひとつである(佐直1980)。
退院後1年以上を経過した外来通院中の脳卒中患者54名を対象として,75項目の質問紙による調査を行い、日常場面における生活活動の遂行状況とIWSとの関係を分析した。活動状況調査表(質問紙)は以下の10カテゴリーで構成されている(中村1983b)。すなわち,仕事(項目番号:1ー6),家庭の仕事(7-16)、子供の世話(17-24),買物(25-30),私的生活(31-37),成人教育と職業訓練(38-42),市民参加(43-49),娯楽(50-57),能動的趣味(58-66),受動的趣味(67-75)である。患者は75項目の活動を過去1年間に行ったか否かを回答した。患者は回答として,0=行わなかった,1=年間数回行った,2=毎月行った,3=毎週行った,4=ほとんど毎日行った,からいずれかを選択して記入した。年齢,性二乱麻痔側、TSO,MⅥrS,家族内地位を独立変数,活動75項目の遂行の有無を従属変数として数量化Ⅰ類を用いて分析を行った。
MWSの平均は56,3(範囲:7,4-161,3)m/minであり,20m/min以下の患者は3名,80m/min以上は10名であった。MlVSは27項目に関して最も有意な判別国子であった。毎日行う身のまわりのこと(洗面 着替え,入浴など),新聞を読むなどの静的活動は,MWSとの関連がなかった。MWSが20m/min以上の患者の大部分は,学習や買物。コレクション、旅行など,一部の家庭の仕事や趣味の活動を行っていた。40m/min以上の患者には,成人教育と趣味活動の拡大がみられる,60m/minを超えると市民参加の活動を。80m/min以上では家族の面倒をみるような私的生活も行っていた。個人の歩行速度と歩行できる距離は、個人の社会的,物理的環境とも関連がある(Finleyetal。1970,Lerner-Frankelet al,1986,Robinett et al,1988)。MWSは,歩行できている脳卒中患者の日常的な生活活動の遂行状況の信頼できる予測因子となろう。