[5]誰の回復が最もよく予測できるか(Nakamuraetal,1992)

CAGTをうけた患者109名のデータを用いて,CAGTのよい適応患者の特性を明らかにし、同時に歩行能力の典型的な回復パターンと脳病変部位との関係について分析した。患者の特性はRES(recoveryevaluatingsystem)と呼ばれているデータベースから得た。このデータベースは,入院した全脳卒中患者の人口学的および神経学的情報,バーセル・インデックスなどの機能的状態の4過ごとの測定値を貯えている(Nakarnura etal。1990b,中村・他1991,Nakamura1999)。

二双曲線関数への近似が有意であったのは91名,有意でなかったのは18名であり,前者を適合群,後者を不適合群と呼ぷ。表5に入院時の2群の人口学的変数と神経学的機能障害を示す。年齢。TSO。身長,体重、神経学的機能障害に関しては2群間に差はない。表6にCAGT開始時のA-IKとN-IK,開始時および7週後の2群のMWSを示す。不適合群と比べて。適合群のMWSはCAGT開始時には低い傾向にあるが,7週間の利得は有意に大きくなっていた(p<0。Dl)。CT所見は、前頭葉。前頭葉以外の皮質,内包,基底核,視床、小脳・脳幹のそれぞれの病変の有無によって分類した(表7)。前頭葉に病変のある患者数とない患者数との比率は、適合群で不適合群よりも有意に低い(p<0。05)。一方,内包病変のある患者数とない患者数の比率は,適合群で高い傾向にある。双曲線関数に有意な近似をみせた患者数の比率は内包病変(+)、前頭葉以外の皮質に病変(-)の場合に高くなる。歩行能力の回復過程は,内包病変と前頭葉病変があって,その他の皮質には病変がない患者において典型的であり,予測可能となることを示唆している。人口学的変数や神経学的機能障害によっては、適合群と不適合群との判別はできない。CT所見は、前頭葉以外の皮質に病変がなく、内包に病変がある場合,れ4WSの回復を予測することが可能であることを明らかにした。このような回復の神経生理学的機構はよく理解されていないが,動物実験から、シナプス発芽やアンマスキング、すなわちシナプスの脱抑制がこれらの機構の背景にあることが示唆されている(Steinetal.1974,Finger1978,Fingeretal.1988.Goldsteinetal.1990)。前頭葉を除く皮質が正常で あることは,そのような構造的再組織化に有利な条件と思われる。

投稿日:2000年3月31日 更新日:

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