1. リハビリテーションの意味

1-1. 医学的リハビリテーションだけではない。
リハビリテーションは、本来、人間復権の意味に用いられていた。Thomas J.Carollは、リハビリテーションについて「リハビリテーションとは、さまざまに異なった状態の中で自分ではどうすることもできず困惑し、情緒障害を起こし、他人に依存して生きてゆかなければならない状態にある中途視覚障害者たちが、自分自身と自分たちのハンディキャブについての理解、失明という状況にとって必要な技能、および自分の情緒と環境に対する新しい統制力を獲得していく過程である。」と定義している。この定義は、現在、若干奇異な感じを与えるが、中途視覚障害者が自立する過程において、自分の障害を認容し、対社会において自己をコントロールするという意味では、的確な定義である。リハビリテーションという言葉は、ハビリテーションという言葉とよく比較されるが、厳密に言えば、この2つの言葉は異なっている。つまり、リハビリテーションは、障害者を以前に経験してきた人生へ復帰させることであり、ハビリテーションとは、障害者をこれから進むべき人生へと育成することを意味している。

1-2. 眼科的リハビリテーション
視覚障害者のリハビリテーションについて考えるときに、その意味を上述したように、医学という狭い領域に限定すべきではない。しかし、眼科の領域では、明らかなリハビリテーションが存在するわけで、その主なものは「医学的弱視」と言われている疾患に対するリハビリテーションがある。これに携わる専門職は、視能訓練士(Orthoptist)と言われる。眼科診療の専門職として、昭和46年に制定された視能訓練士法に規定されている。視能訓練士は、視能矯正と視機能検査という業務を眼科医の指示に従って行う。斜視弱視は、視能矯正の領域の対象となっている。

1-3. 職業自立から人間としての自立へ
視覚障害者の自立は、職業的な自立を確保してはじめて認められるという考え方は、つい12、3年前には当然のこととして受け止められていた。しかし、このような考え方は、高齢の視覚障害者や重複障害者のリハビリテーションを考察するとき、「保護」か「自立」かという二者択一を迫られ、理論的にいきずまりを呈した。リハビリテーションの根本思想として、人間の自立をかかげたのは、わが国ではつい最近である。あくまでも、職業的自立は、リハビリテーションの一部を表しているにすぎない。訓練を行う専門職員の基本的な考え方は、この人間の尊厳の回復という大きな目標を設定してはじめて、自己との関わりが強調され、リハビリテーションの理念がそれぞれに確立される。

 

投稿日:1997年3月1日 更新日:

みんぐる

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