患者に関する包括的な情報を貯えるデータベースは,脳卒中リハビリテーションにおける機能評価および回復評価の両者に必要である.機能障害と能力低下に関する尺度によって評価された機能的回復あるいは機能的帰結は,データベースに適切な多変量解析のような統計手法を用いることで予測することができる.図6は世界保健機関(1980)の国際障害分類(試案)にしたがったデータベース・モデルである.われわれの脳卒中データベースは,これを利用している(Nakamuraetal.1990:中村・他1991).機能的状態とその回復は,神経学的診断,症状と徴候に関係することを前提としている.入院時の機能的状態は,患者の身体的および心理的な機能障害.種々の能力低下に関する各種尺度の利用によって特徴づけられると仮定する.患者の人口学的特徴も機能的状態やその回復に影響するだろう.過去10年間,われわれは脳卒中患者1,000名以上の情報をデータベースに貯えた.機能的回復を予測する重回帰式(予測式)がデータベース資料と統計的手法によって得られている.入院後4,8,12過における各患者の機能的状態は,これらの予測式に患者の機能障害と能力低下,それに人口学的変数を代入することで,訓練開始時に予測される.このようにして.脳卒中リハビリテーションのための機能回復評価システム(recoveryevaluatingSyStem:RES)が東北大学医学部附属リハビリテーション医学研究施設・附属病院鳴子分院で開発された(中村・他1991).RESの詳細は「リハビリテーションマニ ュアル6:脳卒中リハビリテーションのための機能回復評価システム」(中村1999)としても・公表されている.
作業療法開始後4.8,12週のMFSは,人口学的変数と初回MFS、神経学的機能障害を独立変数として用いることで,予測できる(表3).表4に作業療法開始後4.8,12週のMFS予測式を示す.初回MFSは4,8週後におけるMFSに対する予測因子(各R2>0.82)ではあるが,多変量解析で得られた予測式によって個別の患者のMFSを予測することは,時として大きな誤差をもたらすことがある.