[1]脳卒中後の歩行周期(Nakamuraetal.1988c)

脳卒中片麻痔患者の定量的歩行分析についての複数の報告は,時間的・空間的変数は歩行のパフォーマンス評価と回復を記録するのに臨床的に有用な指標であることを示している(Mizrahietal.1982,Brand-stater et al.1983)。歩行速度は発症後12週間は改善するが,3か月後には恒常的な改善はあまりない(Wadeetal.1987)。訓練にとって,最大回復の間に,歩行要素(歩行周期変数)に生じる変化を分析することは重要である。われわれは脳卒中患者が通常の歩行訓練を開始してから8週以内に起こっている歩行要素の変化を記録した。

44-70歳の片麻痔患者10名を調査対象とした。脳卒中発症から歩行訓練開始までの期間は平均2.1(範囲:1.2-4.5)月であった.歩行測定時には,患者は特製の10m歩行路上をできるだけはやく歩いた。特製歩行路はMWS(m/min),WR(steps/min).SL(m)を自動的に計算する。測定は,通常の理学療法による歩行訓練の開始前(0週).中間(4週),終了(8週)の時期に行った。

表1に歩行要素(MWS,WR、SL)の平均値と標準偏差を示す。各変数には,3時点の測定値間に有意な差がみられた(p<0.01)。各測定時とも、MWSはWRおよびSLに有意な相関を示した(p<0.05)。0過と8週において,0週のSLを除いて,各変数と発症からの期間(TSO)との問に有意な相関があった。

4週では,MWSとSLは運動回復段階(Brunnstrom1970)とも関連を示し,WRはTSOと関連を示していた。これらの結果は,歩行パフォーマンスの回復は初期に急速に起こり(Wadeetal.1987)。麻痔側下肢の筋力回復とも関連する(Nakamuraetal.1985、Bohannon1986)という報告の再確認であろう。

さらに,患者のTSOが長いほど,患者が良好な歩行能力を回復する機会は減少することを示している。図3はMWSとWRあるいはSLとの関係である。MWSが20m/min以下WRが90steps/min以下の場合,MWSとWRとの一次回帰式の勾配は急峻である.MWSとSLの関係は一定である。MWSが20m/min以下の群では,MWSの増加とWRおよびSLの増加との相関は,すべて有意である(p<0.01)。しかし,WRとSLとの相関は有意ではない。この群に属する患者では,WRとSLは,それぞれが独立してMWSの決定にかかわる変数となっているようである。MWSが20m/min以上の患者群では、MWSの増加とSLの増加との相関だけが有意であった(p<0.01)。MWSが20m/min以上の片麻痔患者では,MWSの制限因子はSLの減少であった。ここに示したMWSとWR,SLとの関係は脳卒中患者の歩行能力の典型的な回復過程であろう。

投稿日:2000年3月31日 更新日:

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