光学的補助具は、見ようとする物、距離によって使い分けが必要で、個々の目的に合わせて選定をおこなっていく。適切な光学的補助具選定の第一段階は、患者の病歴に眼を通す事である。ある患者が両手を使うような作業をしなければならないのであれば、手持ち式拡大鏡、卓上式拡大鏡は最初から除外される。患者の達成目標ごとに選択すべき拡大鏡を絞り込んでいかなければならない。第二段階では、患者が必要とする倍率度数を決める事である。当クリニックでは、新聞を読むという目標を設定している。新聞の文字サイズを基準にしたオリジナルチャート(写真1)を作製し、新聞を読むための必要倍率を計算する。必要倍率は文字サイズと視距離で算定する。
必要倍率の決定
例)チャートを24cmの距離で保持される時に、新聞の文字サイズの4倍を読むことができる時、新聞の文字を読むための距離は6cmとなる。次に6cmで焦点が合うレンズパワーを計算する。但し,近見視の場合25cmを基準とする(25cm=4D)。
式) 4D=1倍: 視距離/文字拡大倍率
24 / 4 = 6
100 / 6 =16.6(D)
16.6 / 4 = 4
倍率 約4倍
ロービジョン者の視機能の有効活用として光学的補助具が用いられるが、その主たる目的は、網膜像を拡大する事である。その他、蓋明、コントラストの評価も重要である。
網膜像の拡大には次の4つの方法がある。
- 相対的文字拡大法
文字そのものが実際に拡大される。例えば大活字または拡大コピーによって書かれた本など、実際の文字を拡大して網膜像を拡大させる方法。 - 相対的距離拡大法
対象を眼に近づければ、それに比例して網膜像も拡大される。
例えば、25cmで物体を見る時と12.5cmで見る時で比較すると、後者では網膜像の大きさは前者の2倍の大きさになる。 - 角度拡大法
単眼鏡や双眼鏡のような2枚のレンズを組み合わせて拡大する方法である。 - 投射拡大法
この方法は、映写機を通してスライドの拡大されたイメージをスクリーンに投影する方法である。スクリーンに映し出される映画フイルム、文字読み取り(OCR)スキャナを通して文字を読み込みテレビ画面に拡大した文字を映しだす。拡大読書器(CCTV)は、テレビモニタのサイズを大きくすることによって、最大約40倍まで拡大を得ることが可能である。また、マスキングや白黒反転、コントラスト調整機能もある。(写真2)