本書は視覚障害者誘導用ブロック(以下「誘導用ブロック」とする)に関する基礎的事項をまとめてマニュアルとして構成したものである。誘導用ブロックが視覚障害者に有用性を発揮するためには、ブロックの構造とその敷設方法が標準化されていて、設置者と利用者の間のコミュニケーションに敵齢を来していないこと、その活用とそのための訓練方法が確立していることが重要である。これらの点について日本の現状に即してマニュアル化し、アジア太平洋地域における視覚障害者の社会参加を促進することが本マニュアルの目的である。

誘導用ブロックは岡山の三宅精一によって考案され、1967年3月に岡山県立盲学校近くの国道に敷設されたのが世界で初めてであるとされる。続いて京都と大阪、翌年には東京でも敷設が始まり、順次国内に普及してきた。この経過の中で、歩道上のみならず駅のプラットホームまで誘導用ブロックの敷設が普及したが、これには、駅のプラットホームから視覚障害者が転落する事故が絶えず、その予防のために誘導用ブロックの設置が強く求められてきたことにもよっている。

現在、誘導用ブロックの敷設については障害者プランでも数値目標として掲げられており、2002年末に公表された障害者プランにおいては「窓口業務を行う官署が入居する国土交通省所管の既存官庁施設について、手すり、スロープ、視覚障害者誘導用ブロック、身体障害者用便所、自動ドア、エレベーター(延床面積1、000Id以上のもの)等の改修を実施する。平成22年度までに100%」、「一日当たりの平均利用者数が5.000人以上である鉄軌道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル及び航空旅客ターミナルに閲し、原則すべてについて、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には身体障害者用便所の設置を推進する。平成22年までに100%」と掲げられている。

平成14年度の障害者白書によれば、平成13年度末において、1日あたり乗降人員5,000人以上の鉄道関係における誘導用ブロックの普及状況は、JRで945駅中936駅(99.0%)、私鉄大手十五社で998駅中957駅(95.9%)、営団・公営地下鉄548駅中548駅(100%)に誘導用ブロックが設置されている。

このような普及を可能としたのは視覚障害者の強い要望が原動力となったことはいうまでもないが、標準化のために政府の果たした役割も大きい。誘導用ブロックの標準化としては、1985年9月に建設省より「視覚障害者誘導用ブロック設置指針」が公表され、また、2001年9月には工業標準「JIS T9251:2001視覚障害者誘導用ブロック等の突起の形状、寸法およびその配列」が制定された。

本書第1章は主としてJIS T9251:2001に基づいており、第2章は主として建設省指針に基づいている。また、第3章は、当センター更生訓練所生活訓練課程ならびに学院視覚障害学科における視覚障害者の歩行訓練に関する本センターにおける実践をベースにしている。

本書をまとめるにあたり、当センター更生訓練所ならびに日本盲人会連合の職員による共同執筆をお願いした。ご協力いただいた方々に感謝する。

投稿日:2002年12月26日 更新日:

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