1988年1月から1991年2月までの間に,東北大学医学部附属病院鳴子分院には385名の脳卒中患者が医学的リハビリテーションを目的にして入院した。そのうち,109名(28。3%)にCAGTプログラムが実施された。患者の選択基準は,
(1)理学療法開始時に歩行補助具なしで歩行可能であるか、あるいは理学療法をうけているうちに安定した立位が可能となった。
(2)MWSは1OOm/min以下であった,
(3)CAGT開始後の訓練プログラムが7週以上であった,
(4)医学的リハビリテーション開始前に頭部CT検査が行われていた,
である。
統計的に有意な近似が得られたのは91名(83。5%)であった。これらの患者データから双曲線関数。y=A-B/ⅩのパラメータA。Bおよび2B/A(最大歩行速度が2/Aとなる時期)を逐次重回帰分析によって求めた。健常男性のMWSは年齢,等尺膝伸展筋力および体重と相関があること(伊東・他1989),片麻痔患者では患側の等運動性膝伸展筋力や立位バランスの安定が関係すること(Nakamura et al。1985,Mojicaetal。1988,Nakamura1991)から。独立変数として以下の8項Elを取り上げた:性別、年齢,身長、体重,TSO,ⅠⅤ,患側および非恩側の等運動性膝伸展筋力(A-IK。N-IK)。その結果,
(1)パラメータAはA-IKとIVで推定できる(R=0.657,R2=0.423)
(2)パラメータBはTSOとⅠⅤで推定できる(R=0.769.R2=0.591)
(3)2B/AはTSOとIVで推定できる(R=0.977,R2=0.955)
2B/A=1.522×TSO-0.15×IV+3.003
パラメータA,BはCAGT開始時のA-IK。IV,TSOによって推定することは可能であるが,精度が高いとi,まいえない。2B/A,すなわちMWSが達成可能な値の1/2になる時期の予測は正確であり。われわれの経験では実用に耐える。
双曲線関数は,小さな2B/Aは歩行能力の回復がはやいこと,大きい場合はおそいことを告げている。多変量解析によれば,CAGT開始時にTSOが長いほど,MWSがおそいほど,2B/Aは長くなる。これらの結果は,歩行能力の回復のはやさはTSOおよびⅠⅤに依存することを示唆している。