1997年度、世界保健機関報告では、脳血管疾患による死亡者数は地球上で4,600,000人を越えている。そのうちの1/3は先進国,他は発展途上国である。脳卒中患者の1/3は発症後6月以内に死亡し、その後の生存者には麻痔や言語障害,その他の重度な身体障害が残存することもある。1996年、厚生省の調査では, 脳血管障害がわが国における身体障害の原因疾病の第1位である。一方,脳卒中後の機能回復は言語機能を除いて,その多くは発症後6月までであり,それ以降にはあまりみられない。このような調査データは脳卒中の発生率を低下させる努力に加え,脳卒中患者の急性期以降におけるリハビリテーションの重要性を示唆している。
われわれは脳卒中入院患者のリハビリテーションにおいて,どのような治療アプローチがよいのかを検討するために脳卒中機能回復評価システム(RES)を利用し,それと平行して機能回復に関わる理学療法の研究を推進してきた。このマニュアルでは,東北大学医学部附属リハビリテーション医学研究施設・附属病院鳴子分院で開発された脳卒中片麻痔患者に対するコンピュータ支援による歩行訓練(CAGT)プログラムを紹介している。
CAGTは12年以上の使用実績があり,現在では国立身体障害者リハビリテーションセンター病院, 東北大学医学部附属病院,その他の病院で用いられている。
われわれは.脳卒中入院患者の急性期以降のリハビリテーションに携わる医師.理学療法士,その他のヘルスケア専門職が患者の歩行機能回復のために,このマニュアルを利用することを希望している。