日本には身体障害者手帳を所持する30.5万人の視覚障害者がいる。日本眼科医会の発表によれば、手帳を取得していない者や手帳に該当しないが日常生活に困難を感じている視覚障害者は全国で100万人いるといわれている。これらの人々は、視覚が全く使えないわけではなく、何らかの補助具やアイデアがあれば日常生活の困難を軽減する事が可能である。そのための眼科医療は、視覚障害により低下した生活の質をいかに以前のレベルまで戻すかが課題となり、まさにロービジョンサービスはリハビリテーションそのものである。
従来は、治療に抗して障害が残り日常生活に支障があると患者を福祉サービスの対象としてきた。すなわち、医療サービスと福祉サービスが直列の関係にあった。しかしながら、特に視覚障害者の就労を考える時、直列的では時間がかかりすぎ、結果的に休職、退職を余儀なくされる結果となる。そのために並列的に読み書きなどのコミュニケーションの問題、歩行行動や日常生活の問題、心理的な問題等を解決できれば退職する事なしに就労継続、就学継続、家庭復帰等が可能となる。国立身体障害者リハビリテーションセンター病院第三機能回復訓練部では、1985年に日本で初めてロービジョンクリニックを開設し、さらに1991年より眼科医を対象とした研修会を毎年実施し、次第に眼科医を中心としたロービジョンサービスが全国に広がりつつある。
今回、当センターにおける過去15年間の経験を本マニュアルとして要約した。国内外においてこれから新たにロービジョンクリニックを開設される方々の参考にして頂ければ幸いである。