難聴児のハビリテーションプログラムはどのようなプログラムであれ、乳幼児の発達や学習に対する視点に立ち、個々の子供の特性に即したものであらねばならない。方法が先にあるのではなく、子供自身が先にいるのである。子供は一人一人皆異なり、またその両親もしかりである。聴覚一口話的アプローチのプログラムは、子供の年齢、聴力、学習力、性格、家庭環境、両親の考えなどに基づいて作られる。プログラムは次のような点を重視している。
① 早期発見と早期ハビリテーションの開始
② 聴覚活用と楠聴器の適正なフッティング
③ 家庭、特に両親への援助と家庭指導の充実
④ コミュニケーションを基盤とした言語学習
⑤ バランスのとれた全体発達の促進
⑥ ハビリテーションの多様性と個別プログラムの実現
聴覚活用は、子供にとって意味のある聴覚経験によってもたらされる。子供に、良い聴覚的、口詩的環境を準備することが重要であり、それが子供の音声言語の受容や表出の意欲を高め、主体的にかつ楽しみながら言語学習をすすめていくことにつながる。聴覚的学習は、補聴効果、年齢、聴覚的環境の整備、コミュニケーションパートナーの能力などにより様々な影響を受ける。特に乳幼児にとっては両親が生活の場での最も重要なコミュニケーションパートナーであり、両親への教育が必要となる。
不十分な聴知覚への対応として、(a)聴覚的学習による聴知覚の進展(b)聴覚に代わる補助手段の利用 が考えられる。残存聴力の活用は、かなり長期的に進展するものであるが、その実現のためには聴覚刺激の絶対的な不足への対応と系統的な指導が必要である。また補助手段として、身振り、手話、指文字、キュードスピーチ、文字などの手段の導入が考えられる。
聴覚一口話的アプローチのプログラムは、図-13(中村、1993)9)に示すように、医学的管理、補聴器、両親教育、聴能言語指導、社会適応の側面からなっている。聴能言語専門職員は、医師、補聴器ディー幼稚園の先生などと協力しながら、全体のプログラムを中心的に推進する役割を担っている。