難聴児の早期発見を可能にするためには、乳幼児の聴力検査と診断の技術が必要である。乳幼児の聴力検査方法はいろいろな種類がある。検査と診断にあたっては次のような注意が必要である。
① それぞれの検査の特徴を理解し、実施すること
② 乳幼児の聴性行動発達や検査法を熟知した検査者が検査すること。
③ 複数の検査を実施し、総合的に判断すること。
④ 1回の検査で判断せずに、検査を繰り返すこと。
⑤ 十分な問診をし、日常場面での聴性反応を確認すること。
⑥ 診断にあたっては、発達的検査、評価をし、総合的視点から行うこと。
<聴性行動反応検査:BehavioralObservation Audiometry >
適用年齢:0歳から
方法:子供の視野外から、楽器音、呼び掛け、その他種々の Noisemakerを用い、子供の反応を見る。聴性反応は月齢により非常に異なる。発達段階に応じた聴性反応を指標として判断する。子供の年齢、状態に応じて、検査場面、・刺激方法、刺激材料などを工夫して実施する。
特色:発達的評価ができるので、聴覚的発達の顕著な乳児期に重要(図-6)。難聴の発見のスクリーニング検査としの有効性は高いが、確定診断のためにはABR、C OR等の検査が必要である。
<条件詮索反応聴力検査:Conditioned Orientation Reflex Audiometry >
適用年齢:6ケ月~1歳代。最適期は1歳前後
方法:乳児の音源詮索反射を光刺激によって強化する方法を利用した検査。条件付けと興味の持続が重要。
特色:両耳の気導聴力の測定が可能。BOAとの併用が有効。(図-7)
<遊戯聴力検査:Play Audiometry >
適用年齢:2歳~5歳
方法:反応方法に遊びを利用した聴力検査。昔が聞こえた時、ボタンを押すと、電車が動いたり、Peep show boxの中が見えたりする。この場合、聞こえない時にボタンを押しても動かないようになっている。年齢が進めば、音が聞こえた時の反応として、積み木並べやペグ差しなどの遊びを利用し、大人に準じた検査ができる。
特色:スピーカー使用の場合は、両耳の気導聴力の測定。レシーバー使用が可能であれば、左右別の気導、骨導の聴力域値の測定。(図-8)
<標準純音聴力検査:Standard Pure-tOne Audiometry >
適用年齢:
方法:音が聞こえたら一定の方法で合図をする。両耳の気導及び骨導の聴力域値の測定。一般的な聴力検査法だが、音への集中がえられ、自覚的に検査にのぞめれば、幼児から可能である。
<聴性脳幹反応聴力検査:Auditory Brainstem Response Audiometry>
適用年齢:0歳から
方法:頭皮上に電極を接続し、聴覚刺激に対する内耳から脳幹部までの電気的興奮を記録し、コンピューターで加算する。
特色:他覚的検査であり新生児から精度の高い聴力検査が可能。難聴児の早期発見への貢献大。但し、脳波異常の疑われる場合や低音障害型の難聴は慎重な対応が必要。BOAやCOR、全体発達の検査と併せ総合的な判断が必要。
<ティンパノメトリー:Tympanometry >
適用年齢:0歳から
方法:外耳道を密閉し、外耳道内に一定の音を与えながら外耳道内圧を変化させ、鼓膜からの反射音を測定する。
特色:伝音性の難聴の有無を判定できる。溶出性中耳炎の発見には特に効果的。乳幼児でも測定可能。聴力域値の検査ではない。