聴覚に障害がおきると、一般に音やことばが聞こえにくくなり、難聴(hard-Of-hearing)という状態が生じる。難聴による状態は、聞こえの程度と障害部位によって様々な様相を呈する。聞こえの程度はdB(デシベル)という単位を用い、聴力レベル(he-aringlevel)で表す。聴力障害の程度は、一般に平均聴力レベルによって分類される。図-1は、WHOによる聴力障害程度の分類基準である。困に人の諸声の強さは、噴き声が30dB程度、普通の会話が60dB程度、耳元の大声が90dB程度である。従ってそれぞれの基準でどの程度の障害が生じるのか、ある程度の予測は可能である。(図-2)一方日本語のスピーチ・レンジを見ると(図-3)、その範囲が非常に広域に広がっているのが分かる。また環境青も同様である。しかしながら平均聴力レベルは、500Hzと1000Hzと2000Hzの算術平均であり、これだけでは個々の聞こえの特性を表すには不十分である。少なくとも基礎的データとしては、125Hzから8000Hzまでの各周波数毎の聴力を示すオージオグラムが必要である。オージオグラムに表すことにより低域から高域にわたる聴力の型(水平型、高音急墜型等)もわかり、これも有用な情報となる。
耳は音を聞く器官と平衡を司る器官(図-4)からなる。聴覚器官は音の伝搬システムの違いにより伝音系と感音系に分けられる。そこで外耳から中耳の伝音系の働きの障害を伝音難聴と呼び、内耳以降の感音系の働きの障害を感音難聴と呼ぶ。さらに両方が同時に起こっている場合は混合性難聴と呼ぶ。それぞれの難聴は聞こえ方が異なるため、たとえ聴力程度が同じでも、伝書難聴と感音難聴では様相は全く違ってくる。例えば伝音難聴では音を十分に大きくしてやればことばの明瞭度は保たれ、聞き分けは健聴者に近くなるが、感音難聴では音を大きくしてもことばの歪みがあり、聞き分けは容易に改善しない。また補充現象などもあり、音を大きくすると却ってうるさく感じることもある。