[2]活動の選択

作業療法士がどのようにして活動を選択しているか,その過程を以下に記述する.

〔ケース1〕60歳.男性,米穀類販売業
診断:脳出血
合併症:高血圧
機能障害:左側の不全片麻痺と中等度の感覚障害

図12のTSOに対するMFSの関係は,双曲線関数に適合している.図13はMFT-S回復プロフィール表,図14は8過のプログラムに用いられた諸活動である.初回MFT-Sは12(MFS:32)である.基準値を上回っている課題はFE(上肢の前方挙上)であり,そのほかのスコアは基準値と一致している.1週後、基準値を越えている課題はLE(上肢の側方挙上)であり,下回っている課題はPO(手掌で後頭部に触れる)である.3週後1MFT-Sは20(MFS:63)となり.PI(つまむ)のスコアが基準値よりも低い.ここで,作業療法士は患側上肢の自動的関節可動域を拡大し,握力を強めるためのプログラムを作成する. 選択された活動は、輪移し(前方へ動かす:自動運動).サンディング(抵抗運動),木製ブロック(後方へ動かす),スタンピングである.退院時のMFT-Sは27(MFS:84)である.

〔ケース2〕51歳,男性,大工
診断:脳出血
機能障害:右側の不全片麻痔と中等度の感覚障害

図15はMFT-S回復プロフィール表に初回MFTの結果を記入したものである.初回MFT-Sは12.基準値よりもスコアの低い課題はFE(上肢の前方挙上)とPD(手掌で背部を触れる)である.PI(つまむ)のスコアは基準値よりも高い.患側上肢の分離運動と指先つまみの回復を促進するため,次週以降の訓練用に両上肢の複合動作を利用するプログラムを作成する.

課題1 輪移し(前方へ動かす:自動介助運動):サスペンション・スリング(重量:1.5kg)によって患側前腕は支えられた姿勢で、輪投げの輪を前方に運ぶ.患者は輪を患側手で保持し,ポールに向かって運んで入れる.肩関節の自動的屈曲が900に達するまで、ポールの高さを次第に上げてゆく.

課題2 輪移し(後方へ動かす):患者は机上の輪を恩側手(右手)で取り上げて保持する.作業療法士の指導の下に,輪を保持したまま、患側上肢を自動介助運動によって自分の背部に回す.背部で輪を右手から左手に渡す.次第に左手に輪を渡す位置を背部中央に移してゆく.

課題3 レーシング:患者は患側手(右手)にレザー・シートを持ち、左手で革紐を穴に通して線かがりを行う.

〔ケース3〕67歳,男性,無職
診断:脳出血
合併症:高血圧
機能障害:右不全片麻療

図16はMFT-S回復プロフィール表に記した患者のMFT-Sデータである.初回MFT-Sは27である.PP(ペグボード)スコアが基準値よりも低い.患側腕と手指の分離運動は可能であるが,母指と他の手指による動作の遂行は,屈筋共同運動のために拙劣である.作業療法士は次週のプログラムに腕と手指の協調運動を必要とする諸活動を選択している.

課題1 スタンピング:患者は円柱形の木製スタンプ(直径:3cm,長さ:10cm)を母指と他の手指で保持し,壁に添付した紙にスタンプを行う.

課題2 描画:鉛筆で図形を描き,それに色づiナを行う.

課題3 マクラメ:この手工芸を行うためには.巧みなつまむ動作と両手の協調的な動作が必要である.

投稿日:2000年3月31日 更新日:

みんぐる

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